最高裁判決とタクシードライバーの残業問題
最高裁判決とタクシードライバーの残業問題
タクシー業界は今回のコロナウィルスの蔓延で大きなダメージを受けています。
ヒアリングすると、2月~3月の中旬は売上が3割減、3月下旬以降は5割近い減少だそうです。
タクシー会社としてももちろん痛いのですが、歩合賃金で働くタクシードライバーの生活も心配です。
このコロナは楽観的に見れば一過性なのですが、中長期的に業界に一石を投じるかもしれない出来事が起こりました。
3月30日にタクシードライバーの残業代(割増金)に対する最高裁判決です。
この最高裁判決は、破棄差戻しなので確定ではありませんが、『簡単に言うと歩合給だろうと割増金を払え』という判決です。
昨今の社会情勢を踏まえると違和感のない判決ではありますが、
タクシードライバーの雇用慣行を考えると業界としては負担になるかもしれません。
(ちなみに各種報道をみると「残業代」と記載があるのですが、残業代よりは深夜手当、
公出手当(休日出勤手当)の方が大きそうに思います。)
こちらの勉強不足かもしれませんが、この記事では残業代よりも広義の割増金について述べます。
タクシードライバーの給与体系は通常完全歩合制
もちろん完全歩合制とはいっても、通常であれば歩合制でかなり稼ぐことができます。
給与が最低賃金を下回ることはありませんので、最低賃金が問題になることはありません。
(今回のコロナで売上が半分になると最低賃金を下回ってしまいそうですが、あくまで一過性とここでは考え無視しておきます)
具体的には、『歩合給(=売上の〇%)』と『基本給+割増金(残業代、深夜手当、公出手当)』を
比べて大きい方が支払われる仕組みですが、基本的には歩合給が大きくなるので完全歩合給となるわけです。
歩合給の源泉となる売上を上げるために、長く働いたり、深夜働いたり、休日に働いたりするわけですから、合理的と言えば合理的です。
今回の判決は、この合理的な考え方は労働基準法の趣旨にはそぐわない、ということでしっかり割増金を払うべき、という内容でした。
これが現行の雇用形態のまま適用されるとなるとタクシー会社の負担が大きいように思います。
均衡点を探すとすると、
①勤務体制を見直す
②歩合の比率を下げて割増金を支払うようにする
くらいしか思い浮かばないのです。
①は昨今の人手不足で難しいとすると②となるのですが、タクシードライバーにも必ずしもプラスだけではないように思います。
全員の稼ぎを集めて、まずそこから割増金を支払って、残った部分を歩合給に充てる形になるので、稼ぐドライバーには面白くない制度なのかもしれません。
元々個人事業主と契約するようなな雇用形態であったので、そこに問題点があったのだろうとは思いますが、今後の業界の動向を注視していきたいと思います。